2023.09.07
この度、Archiship Library &Cafeでは、10周年記念企画として
髙宮眞介による連続講義「クラシシズムとモダニズム」-「西洋建築史意匠講義」を振り返る-を開催することになりました。
この機会に是非お越しください。
事前の申し込みが必要になりますので、下記の内容に従ってお申し込みください。
「クラシシズムとモダニズム」 -「西洋近代建築史意匠講義」を振り返る-
2013年Archiship Library &Cafeで1年間にわたって行われた幻の名講義がよみがえる!
主催 Archiship Library &Cafe 代表 飯田善彦
講師 髙宮眞介
司会及び質疑を含む対談 飯田善彦
日程 10/14、28、11/11、25、の計4回(いずれも土曜日)
場所 横浜市中区吉田町4-9 Archiship Library &Cafe
時間 午後2時〜4時
定員 25名 9/15申し込み開始-申し込み多数の場合1週間後抽選
参加費 20,000円(全4回、資料含む)
なおこの講義は講義録として後日書籍化されます。
主催にあたって
2013年に13回にわたってALCで行われた髙宮眞介による連続講義「西洋近代建築史意匠講義」は、ルネサンス以降現代に至るおよそ600年間の西洋近代建築史を、自身が選んだ100人の建築家とその作品群について独自の視点から解読しつつ、時には継時的に、時には対立的に配置し、時間軸に沿って縦横無尽に語り、あらゆる意味で激動し続ける近代社会史の中に、複雑に生起し伝播し変形し継続するさまざまな建築の潮流を捉えた上でそれらを分析を交えて整理することで大きな絵図に見事に定着させ、さらにその延長にどんな建築が現れるべきか、これからの議論の土台をも提起する名講義でした。その次の年の「日本近代建築史意匠講義」と併せ、実に充実し幸福な2年間だったと今でも思い返すほどです。
2021年ALCが10周年を迎える機会に、記念企画として改めて髙宮さんにもう一度好きに建築を語ってもらおうと考え、伺いを立てましたが何せコロナ全盛期、自粛せざるを得ず、また髙宮さんの体調不良もあって延期を続け結局2年が経ってしまいました。今年になってコロナも鎮静化し髙宮さんの気力も戻りこの度晴れて10周年記念企画が実行の運びとなったわけです。
主催者である僕としてはさすがに年齢体調考慮し建築談義のようなあまり負担のかからない内容で申し入れていたところ、当の髙宮さんは驚くことにこの間改めて書籍の読み込みを続け、かつてのご自身の講義を再点検し「クラシシズムとモダニズム」というテーマで10年前の講義を異なる視点で再構築する企画を提案されました。そのために取り上げた建築群が非常に魅力的、自分用にまとめられたシラバスを読むだけでワクワクするようなラインナップです。
600年の歴史を大きな二つの潮流にどのようにまとめて料理するのか、優れた知見と豊かな博識に裏付けられたさまざまな言葉、淡々とした語りを想像するだけで嬉しくなります。御歳84歳、愚痴をこぼしながら念入りに講義の準備を楽しむ、建築そのものが身体化している、建築の化身といっても良いでしょう。このように豊かな学究精神を持つ建築家は他に思いあたりません。
髙宮さんともう一度西洋近代600年の建築史を巡る旅ができる、こんなに心躍ることはありません。ぜひみなさんと同じバスに乗って楽しい時間を過ごしたいと思います。
ALC代表 飯田善彦
連続講義「クラシシズムとモダニズム」
-「西洋建築史意匠講義」を振り返る-
第1回 クラシシズムの500年-その永続性-(第1部)
<オスピダーレ・デッリ・イノチェンティ/1421起工>
<パラッツオ・ルチェッライ/1451>
<ヴィッラ・アルメリコ・カプラ/1567>
2)古典主義への異議申立て−マニエリスムの建築
<カンピドリオ広場/1538設計>
<ラウレンティアーナ図書館/1559>
<ヴィッラ・ジュリア/1553>
第2回 クラシシズムの500年-その永続性-(第2部)
3)クラシシズムの深化と発展−バロックの建築
<サン・ピエトロ大聖堂・広場/1506〜1667>
<サンタンドレア・アル・キリナーレ聖堂/1678>
<サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂/1667>
4)クラッシズムの回帰と進化−新古典主義、歴史主義の建築
<ニュートン記念堂/1784>
<アルテス・ムゼウム/1830>
<森の礼拝堂/1920>
第3回 モダニズムの100年-その多様性-(第1部)
1)新技術、表現主義、革新の思想―初期モダニズム
<郵便貯金局出納ホール/1905>
<AEGタービン工場/1909>
<プラウダ本社社屋計画案/1924>
<シュレーダー邸/1924>
<ファン・ネレ工場/1927>
<バルセロナ・パヴィリオン/1929>
<ヴィラ・サヴォア/1931>
<カサ・デル・ファッショ/1936>
第4回 モダニズムの100年-その多様性-(第2部)
3)「物質性」と「場所性」、地域性の獲得―後期モダニズム
<ルイス・バラガン自邸/1948>(メキシコ)
<シーグラム・ビルデイング/1958>(アメリカ)
<ソーク・インスティテュート/1965>(アメリカ)
<サンタ・マリア教会/1996>(ポルトガル)
結(まとめ):「永続性」と「多様性」
講義の趣旨
10年前の2013年、飯田さんの事務所のライブラリー・カフェで「建築史意匠講義」(西洋編)と題した連続講義をやりました。このたび、飯田さんからの要望もあって、その時の講義で取り上げた建築作品を、自分なりの視点で振り返りってみようということになり、4回だけということで引き受けることにしました。
ところで、この10年の間でも日本の建築界のデザイン状況は大きな変化を遂げているように思います。たとえば、設計者の構成が一層複雑になる一方で、大きな仕事は大組織の事務所に、住宅などの小さな仕事はアトリエ事務所にという棲み分けも顕著になってきています。また再開発などの大きな仕事は、主旨不明の刹那的なデザインが常態化し、建築雑誌はリノベーションや木造など、SDGsという免罪符のみの作品が多く見られるようになってきています。いまや画像生成AIで簡単にデザインができてしまう時代、これらはますます建築家の存在意義やデザインの質が問われる事態を招くであろうと想像されるわけです。
このような現状を考えるにつけ、リアルな歴史上の事実として、改めて建築作品の意義や設計者の意図などを知ることは大いに価値のあることではないでしょうか。とくに、近代建築史における「クラシシズム」と「モダニズム」という二つの大きな「イズム」の中で、建築家が何を考え、作品の中にどんな思いを込めようとしたのかを、今の時代に投影してみることによって、それらの価値が逆照射され浮かび上がってくるように思います。それがこの講義を思い立った大きな要因の一つです。
この講義はいろいろな意味で前回の形式を踏襲しています。例えば、講義ではルネサンスを起源とし、20世紀モダニズムまで約600年にわたって、クロノロジカルに建築家とその作品を取り上げます。また、もとより僕は建築家で歴史家ではありませんので、建築の歴史の講義ではなくて、歴史的建築の意匠についてお話しするという趣旨も前回と同じです。しかし、4回という限られた講義ですので、前半をクラシシズム(古典主義)、後半をモダニズムとし、それぞれ12作品ずつに絞って、それらの作品を中心に意匠について話をするつもりです。
2023年9月 建築家 高宮 眞介